AIサービスの課金設計と規約:消費単位・失敗時の扱い・自動課金の表示

月額、クレジット、従量、追加料金が重なるAIサービスでは、何を数え、いつ消費し、失敗したら戻すのか、どう終わるのかを、規約と料金表と画面で同じに書く必要があります。

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課金の単位の定義が、規約と料金表と画面でずれていると、生成が失敗したときや、無料トライアルが終わったときに、争いになります。

このページの要点

  • 消費単位(回・クレジット・量・時間・件数)の定義を一か所に置き、規約・料金表・画面・請求書の表記を一字も違えない。
  • 生成の失敗は「予約して、成功したら確定し、失敗したら戻す」流れにし、期待に沿わない出力と処理の失敗を分けて書く。
  • 料金表を規約に取り込むなら、版・改定の周知・効力発生時期・解約の道を決める(民法548条の2・548条の4)。
  • 無料トライアルから自動課金に移るときは、最終画面に期間・金額・解約の期限と方法を表示し、日割りなし・返金なしは消費者契約法で見直す。

結論:課金の「単位」を先に決め、規約には「消費・失敗・繰越・終了」の四つの場面を書く

生成AIのサービスの料金は、月額や年額だけで済むことが少なく、生成の回数、クレジット、処理した量、通話した時間、発信した件数といった「AI特有の消費単位」と組み合わさります。単位が増えるほど、規約と料金表に書くべきことも増えます。決めておかなかった場面で争いになりやすいのは、次の四つです。

  • 消費:何をした時点で、単位がどれだけ減るのか(依頼を受け付けた時か、結果を表示した時か、利用者が保存した時か)。
  • 失敗:生成に失敗した、外部の処理が途中で止まった、結果が空だった、という場合に、単位を消費したことにするのか。
  • 繰越:使い切れなかった分を翌期間へ繰り越すのか、期間ごとに失効させるのか、解約したらどうなるのか。
  • 終了:月の途中で始めた場合と終わった場合の料金、サービス自体が終わる場合の清算はどうするのか。

もう一つの前提は、誰に売るかです。事業者だけを相手にするサービスと、個人が申し込めるサービスとでは、表示の義務や条項の評価が変わります。個人と法人の線引きは個人向けと法人向けの規約の違いで整理しており、このページでは、料金と消費単位の定め方に絞って説明します。外部のAIの費用を誰が負担するかは、外部AIに依存するサービスの規約とも関わります。

以下では、単位の種類、料金表の取り込み方、失敗時の扱い、外部の費用とアプリストア課金、無料トライアルから自動課金への移行、日割りなし・返金なしの評価、起きがちな場面の順に述べます。条文は、民法、消費者契約法、特定商取引に関する法律(特商法)の現行の規定で確認しています。

AI特有の消費単位:何を数えるかで、争いの起きる場所が変わる

料金の単位は、利用者にとっての分かりやすさと、提供者の原価の構造の両方で選ばれます。生成の回数で数えるのか、処理量で数えるのか、時間で数えるのかによって、規約に追加すべき条項が違ってきます。

消費単位ごとの特徴と、規約で補う点

単位利用者から見た分かりやすさ起きやすい食い違い規約で補うこと
生成の回数1回の依頼で1回と数えるので分かりやすい再生成・修正指示・複数候補の同時出力を何回と数えるか「1回」の定義、再生成の扱い、同時出力の数え方
クレジット料金を先に交換して使うので予算を立てやすい機能ごとの消費量の違い、有効期間、残りの表示の誤差機能別の消費量を記載した表、失効、残高の表示は目安であること
処理した量(文字数・トークン・ファイル容量)内部の計算単位が見えにくい入力と出力のどちらを数えるか、長い入力の自動分割数える対象(入力・出力・両方)、上限、超過時の挙動
時間(通話・録音・文字起こし)時間の長さに比例するので直感的切り上げの単位、無音や呼出中の時間、処理に失敗した時間切り上げの単位、課金の開始と終了の基準、失敗時の扱い
件数(発信・送信・取得)成功した件数だけ払うと思われやすい不通・留守・拒否・相手の受話器が上がらなかった件数成功の定義、不成立でも消費する場合の列挙
席数・アカウント数人数で固定なので明快共有利用、休止中の席、途中追加の日割り追加・削除の時期と料金、共有の禁止または許容

たとえば発信件数で課金するサービスでは、「発信した件数」と「つながった件数」と「会話が成立した件数」は別のものです。どれを数えるのかを書かなければ、利用者は成立した分だけ払うつもりでも、提供者は発信した分すべてを請求するつもりになりかねません。時間で課金するサービスも同じで、呼出中の時間や、AIが応答を生成している待ち時間を含めるのかを決めておきます。通話や録音を扱うサービスの派生データの扱いは、録音・文字起こし・通話AIの規約で説明しています。

単位を決めたら、規約には単位の定義を一か所にまとめます。定義は初めて出てくる箇所で置き、料金表や別紙の用語と一字も違えないようにします。「回」「件」「クレジット」「ポイント」を、条文ごとに別の意味で使うと、後の条項の読み方が割れます。

条文例消費単位の定義(書き方の例)

  1. 「生成1回」とは、利用者が入力を送信し、当社が結果の生成を開始した時点から、当社が結果の表示または送信を完了した時点までの一連の処理をいいます。
  2. 利用者が同一の入力について再度生成を指示した場合は、再生成も、前項の生成1回として数えます。ただし、第○条に定める失敗の場合はこの限りではありません。
  3. 1回の依頼で複数の候補が同時に出力される機能については、候補の数にかかわらず、依頼1件を生成1回として数えます。ただし、当社が別に料金表で定める機能を除きます。
  4. 当社が表示する消費の残量は目安であり、処理の遅れ等により実際の残量と異なる場合があります。実際の残量は、当社が保存する記録によります。

数字や例外は、料金表と同じ版の別紙に置き、規約本文は定義と考え方だけにしておくと、料金の改定のたびに規約本文を変えずに済みます。

料金表を規約に取り込む:別紙にするか、ウェブの料金ページにするか

料金は変わりやすいので、規約本文に金額を書き込まず、料金表を別に置く設計が多く見られます。ただし、別に置いた料金表を契約の内容にする方法と、それを後から変える方法は、規約の中で明確にしておく必要があります。不特定多数に同じ条件で提供する規約は、民法上の「定型約款」にあたり得ます。定型約款は、契約の内容とする旨を相手方に表示していれば、個別の条項についても合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。一方で、相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項のうち、信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意をしなかったものとみなされます(同条2項)。

料金表の取り込みで押さえる点は三つです。

  1. どの版が契約の内容か:申込み時点の料金表を契約の内容とするのか、常に最新の料金表を契約の内容とするのかを決める。
  2. 変更の手続:変更後の内容と効力発生時期を、インターネットの利用その他の適切な方法で周知する。合理性を理由に変更する場合は、効力発生時期の到来までに周知しなければ効力を生じない(民法548条の4第2項・3項)。
  3. 継続中の契約への適用時期:すでに支払済みの期間の料金は変えないのか、次の更新から変えるのか、利用者が変更に同意しないときは解約できるのかを書く。

定型約款の変更の規定は、料金その他の条件を一方的に変えるための道具として、無条件に使えるわけではありません。変更が相手方の一般の利益に適合するときか、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更することがある旨の定めの有無や内容などに照らして合理的なときに限られます(民法548条の4第1項)。料金の値上げは、利用者にとって一般の利益に適合するとは言いにくいので、合理性の側から説明できる設計が必要です。

書き方の例(一般的な例) 料金の改定条項

改定の根拠と周知

よくある書き方当社は、必要と判断したときは、利用者に通知することなく、料金を変更することができます。
整えた書き方当社は、原価の変動その他の事情により料金を改定する必要が生じたときは、改定後の料金と適用開始日を、適用開始日の○日前までに、利用者に電子メールまたは本サービス上の掲示により通知します。

理由変更の合理性と、変更前の周知の二つを条文に取り込む。通知のない変更は、周知を欠く変更として効力を争われやすい。

改定を受け入れない場合

よくある書き方改定後に利用を続けた場合は、改定に同意したものとみなします。
整えた書き方利用者は、改定後の料金に同意しない場合、適用開始日の前日までに解約することができ、その場合は改定前の料金のみを負担します。

理由利用を続けたことだけを同意とする書き方は、解約の機会が実際に確保されていなければ、説得力が弱くなる。

料金表との関係

よくある書き方料金は、別途当社が定めるものとします。
整えた書き方利用料金は、申込み時点で当社が表示する料金表のとおりとし、料金表は本規約の一部を構成します。

理由「別途定める」だけでは、どの時点のどの文書が契約の内容かが決まらない。

生成に失敗したとき:クレジットの非消費、繰越なし、期間ごとのリセット

AIのサービスは、依頼を受け付けても、結果が返らないことがあります。通信の途絶、外部のAIの応答の失敗、入力の不備、安全上の理由による出力の拒否など、原因はさまざまです。ここで「失敗したら消費しない」という原則を置くのか、置かないのかを、規約と料金表で決めておく必要があります。

一つの依頼が処理されて、単位が確定するまで

  1. 1 受付利用者の入力を受け付けます。この時点で単位を予約する(残量から仮に引く)のか、まだ何もしないのかを決めます。
  2. 2 処理自社の処理と、外部のAIへの問い合わせが行われます。外部の応答の遅れや失敗は、この段階で起きます。
  3. 3 結果の返却結果が表示または送信されます。空の結果、途中で切れた結果、安全上の理由で出力されなかった場合を、「失敗」に含めるかを決めておきます。
  4. 4 消費の確定成功した処理だけ単位を確定し、失敗した処理は予約を解除して残量を戻します。
  5. 5 記録確定した消費と、戻した分の記録を残します。利用者から問い合わせがあったとき、記録が根拠になります。

「予約して、成功したら確定し、失敗したら戻す」という流れにしておくと、規約の文言と実際の動きがそろいます。

失敗時の扱いは、次の三つの型に分けて考えると整理しやすくなります。

失敗時の扱いの三つの型

型内容向いている場面注意点
自動で戻す型失敗と判定された処理の単位を自動で戻す失敗の判定が機械的にできる場合「失敗」の判定基準を条文に書く
申出で戻す型利用者の申出を受けて確認し、戻すか決める結果の質に関わる不満が多い場合申出の期限と、判断の基準を示す
戻さない型結果の質にかかわらず、実行した処理は消費する原価が処理のたびに発生する場合失敗の判定が曖昧だと、不当に不利な条項と評価されやすい

どの型を選ぶにしても、結果の内容が利用者の期待に沿わないことと、処理そのものが失敗したことは、区別して書きます。生成AIの出力は、同じ入力でも毎回異なり、利用者の期待と合わないことがあります。これを「失敗」に含めると、戻す対象が際限なく広がります。一方で、処理が完了しなかった場合まで消費にするのは、利用者から見て納得しにくい条項です。

条文例生成に失敗した場合の取扱い(書き方の例)

  1. 当社の責めに帰すべき事由、通信の障害または外部サービスの障害により、生成の結果が利用者に表示または送信されなかったときは、当該生成に係る消費単位は消費されなかったものとして取り扱います。
  2. 前項の「結果が表示または送信されなかったとき」には、生成の内容が利用者の期待に沿わない場合、入力の内容が本規約に違反するため出力を行わなかった場合を含みません。
  3. 未使用の消費単位は、各利用期間の末日の経過をもって失効し、翌期間に繰り越されません。ただし、当社が料金表で繰越を認める旨を定めた場合は、その定めによります。
  4. 消費単位の残量は、本サービスの終了または利用契約の終了の場合を除き、現金その他の対価に換えて払い戻しません。

第4項のように「払い戻さない」と書くときは、サービス全体を提供者の都合で終了する場合の清算を別に定めておきます。消費者を相手にする場合の評価は、後の節で述べます。

「繰越なし」「期間ごとのリセット」は、毎月一定数のクレジットを付与する設計で多く見られます。繰越を認めるなら、上限と期限を決めます。無制限に繰り越すと、資金決済法上の前払式支払手段にあたるかどうかの検討が必要になる設計もあります。その整理は、条文と所管官庁の資料で確認が必要で、ここでは扱いません。

外部のAIの費用とアプリストア課金:誰が、どの経路で払うのか

外部のAIを組み込んだサービスでは、外部の事業者に支払う利用料が、提供者の原価になります。この費用を料金に含めるのか、利用者に別に負担してもらうのかを、利用者が申込み前に分かる形で示します。利用者が自分の契約や鍵を持ち込む型は外部AIに依存するサービスの規約で詳しく述べており、ここでは課金の表示の側面だけを扱います。

外部のAIの費用の負担の型

型料金の見え方規約・料金表に書くこと
料金に含める外部の費用を含んだ一つの料金外部の費用が値上がりしたときの改定の条件、一定量を超えた場合の扱い
実費を上乗せする基本料金に、実際の使用量に応じた実費を加算実費の算定方法、上限の有無、請求の時期、明細の提示
利用者が直接払う外部への支払は利用者が外部の事業者に行う提供者は外部の費用を負担しないこと、外部の請求に関する責任の所在

実費を上乗せする型では、月の途中で使用量が想定を大きく超える場合に、利用者が気づかないまま高額になることがあります。上限額の設定や、一定の額に達したときの通知を、規約と画面の両方で用意しておくと、請求の根拠も説明しやすくなります。

アプリストアを通じて課金する場合は、決済、解約、返金の手続の多くが、ストアを運営する事業者の定める手続に従います。このとき、規約に何を書くかが問題になります。提供者が自由に返金を決められない場合でも、利用者から見れば、問い合わせ先は提供者だと思われがちです。規約では次の三点を書き分けておきます。

  • 決済、解約、返金の手続は、ストアの運営事業者の定める条件に従うこと。
  • 提供者が返金の可否を判断できない場合があり、その場合の問い合わせ先がどこになるか。
  • ストアを通じた課金と、提供者の自社の決済とで、料金や提供される機能が異なるときの表示。

ストアの運営事業者の規約の内容は、変更されることがあります。規約には条文の引用をせず、「ストアの運営事業者の定める条件による」と書いておく方が、変更に追随できます。個別のストアの規約の確認は、提供の時点で、運営事業者の公表する原文で行います。

無料トライアルから自動課金へ:申込み画面の表示と解約の期限

無料のトライアル期間が終わると自動で有料に移る設計は、広く行われています。利用者が有料への移行に気づかないまま課金されると、苦情の原因になります。個人が申し込めるサービスでは、特商法の通信販売に関する規定が関わります。

  • 通信販売で役務を提供する事業者は、広告に、役務の対価、支払の時期と方法、役務の提供時期、申込みの撤回または解除に関する事項などを表示しなければなりません(特商法11条)。
  • 二回以上継続して契約を締結する必要があるときは、その旨と金額、契約期間などの条件を表示します(特定商取引に関する法律施行規則23条7号)。
  • 申込みの手続が表示される画面には、役務の分量や、法11条1号から5号の事項を表示し、申込みとなることについて人を誤認させるような表示や、これらの事項について誤認させるような表示をしてはなりません(特商法12条の6)。

たとえば「無料で始められます」とだけ大きく示し、トライアル終了後の自動課金や金額が小さな文字や別の画面にしか書かれていない画面は、この誤認させる表示の問題になり得ます。申込みの最終の画面に、トライアルの期間、終了後の料金、自動で更新されること、解約の期限と方法を、まとめて見える位置に置きます。

書き方の例(一般的な例) トライアルと自動課金の表示

最終画面の表示

よくある書き方「今すぐ無料で始める」のボタン。終了後の課金は利用規約に記載。
整えた書き方「無料期間は○日間です。無料期間の終了後は、月額○円(税込)が自動で課金されます。解約は無料期間の終了日の前日までに、○○の画面から行えます。」をボタンの直前に表示。

理由申込みの画面で、課金の開始時期と金額、解約の方法が見えるようにする。規約へ誘導するだけでは足りない。

解約の期限

よくある書き方解約は、更新日の前までにお申し出ください。
整えた書き方解約は、各更新日の前日の午後○時までに、会員ページから行えます。期限を過ぎた場合、次の期間の料金が発生します。

理由「前まで」が何時なのかを書く。画面の操作の締切と、規約の期限をそろえる。

自動更新の通知

よくある書き方特に通知はしません。
整えた書き方更新日の○日前までに、更新の日と料金を電子メールでお知らせします。

理由通知を約束する場合は、実際に送れる運用にしてから書く。送れない約束は書かない。

なお、特商法の通信販売の規定は、営業のために、または営業として契約する者を相手とする販売や役務の提供には適用されません(特商法26条1項1号)。事業者だけが申し込めるサービスであれば適用されないことになりますが、事業者専用と書いても、実際に個人が消費者として申し込める画面や運用であれば、実態で判断されます。申込みの段階で、事業として契約することを確認する仕組みを置くかどうかは、個人向けと法人向けの規約の違いで述べた論点です。

日割りなし・返金なし・自動更新:個人が申し込む場面での評価

月額課金の規約に多い条項は、「月の途中で始めても当月の料金は全額かかる」「解約しても当月分は返金しない」「一度支払った料金は返金しない」「解約しない限り自動で更新される」といったものです。事業者間の取引では、これらは広く行われています。個人が相手になると、これらの条項は消費者契約法の審査を受けます。

料金に関わる条項と、確認する条文

条項確認する条文見られやすい点
当月の料金は全額かかる(日割りなし)消費者契約法10条、民法548条の2第2項提供の実態とのつり合い、利用開始日の表示
解約しても支払済みの料金は返金しない消費者契約法9条1号・10条解除に伴う違約金や損害賠償の予定とみられる場合は9条1号。そうでなければ10条
提供者の都合による終了でも返金しない消費者契約法10条(損害賠償責任の免除を伴う場合は8条)提供されなかった期間の対価まで返さない書き方は、一方的に不利と見られやすい
自動更新消費者契約法10条、特商法11条・12条の6更新の事実と解約期限の表示。表示が弱ければ誤認を生じさせる
遅延損害金消費者契約法9条2号消費者が支払期日までに支払わない場合の損害賠償の額の予定や違約金は、年14.6パーセントの割合で計算した額を超える部分が無効

ここで押さえておきたいのは、消費者契約法9条1号が、「契約の解除に伴う」損害賠償の予定や違約金に限られた規定である点です。単純な契約違反に対する違約金や、解約と関係のない一般の条項は、同条1号ではなく、消費者契約法10条などで評価されます。条項ごとに、どの条文で見られるのかを分けて考えます。また、提供者の責めに帰すべき事由によってサービスが終わる場合の返金をまったく認めない条項は、同法10条の問題になり得ます。なお、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は、同法8条1項1号により無効です。

実務上の整理としては、次の方向が考えられます。

  • 月の途中の開始は、日割りにするのか、次の月初から課金するのかを選び、申込み画面にも表示する。
  • 解約による返金は、期間の途中で解約した場合でも、すでに提供した期間に対応する分は返金しないが、提供者の都合による終了や、提供者の責めに帰すべき事由による解除では日割りで返金する、という二段にする。
  • 返金の例外(申込み後の一定時間内の申出など)を置くときは、期限と手続を具体的に書く。
  • 遅延損害金の割合は、消費者を相手にする場合は上限を超えない定めにする。事業者のみを相手にする場合も、割合を料金表か規約の同じ箇所に書く。

個人向けと法人向けの条項の差分は、個人向けと法人向けの規約の違いの差分表にまとめています。一つの規約で両方に対応する場合は、個人が申し込むときだけ適用する条項を別に定める書き方もあります。

起きがちなこと:課金の単位と画面と規約がずれたとき

場面別の「起きがちなこと」と、先に決めておくこと

生成が失敗したのに、残量が減っていた

起きがちなこと通信の途絶で結果が表示されなかったが、予約された消費が戻らず、利用者から問い合わせが来る。規約に失敗時の扱いがないため、個別に判断することになる。

先に決めておくこと失敗の定義、消費を予約して成功時に確定する処理、戻した記録の保存、問い合わせの窓口と期限。

料金表を改定したら、継続中の利用者から異論が出た

起きがちなこと改定を告知したが、周知の方法が掲示だけで、利用者の多くは気づかなかった。効力発生時期より後に周知が行われ、改定の効力が争われた。

先に決めておくこと周知の方法、効力発生時期より前に周知を終えること、改定を受け入れない場合の解約の道。

無料トライアルの終了後に課金されて苦情になった

起きがちなこと最終画面には無料の表示が目立ち、自動課金は規約にだけ書いてあった。利用者は課金に気づかず、解約の期限も過ぎていた。

先に決めておくこと最終画面でのトライアルの期間・終了後の金額・解約の期限と方法の表示、更新前の通知。

外部のAIの費用が想定を超えて、請求が膨らんだ

起きがちなこと実費を上乗せする型で、利用者が大量に処理を依頼し、月末に高額の請求となった。上限も途中の通知もなかった。

先に決めておくこと上限額の設定、一定額に達した時の通知、請求の明細、上限を超える場合の処理の停止。

アプリストア経由で課金した利用者が、提供者に返金を求めてきた

起きがちなこと提供者側では返金の可否を決められず、利用者はたらい回しにされたと感じた。

先に決めておくことストア経由の課金の返金は、ストアの手続に従うこと、案内する窓口、提供者が判断できる範囲。

契約前の確認(課金設計)

  • 消費単位の定義が、規約・料金表・画面・請求書の表記で一致しているか。
  • 失敗した処理の単位の扱いを、条文で決めているか。実際の処理の流れと一致しているか。
  • 繰越と失効を決め、解約時や終了時の残量の扱いも書いているか。
  • 料金表の版と、変更の手続(周知、効力発生時期、解約の道)が書かれているか。
  • 無料トライアルから自動課金に移る場合、最終画面に期間・金額・解約の期限と方法を表示しているか。
  • 個人が申し込める場合に、日割りなし、返金なし、遅延損害金の条項を、消費者契約法の条文に照らして見直したか。

よくあるご質問

生成に失敗したときは、必ずクレジットを戻さなければなりませんか。

法律が一律に戻すことを求めているわけではありません。ただ、処理が完了していないのに消費したことにする条項は、利用者の納得を得にくく、消費者を相手にする場合は消費者契約法10条などの審査を受けます。処理の失敗は戻し、結果の内容が期待に沿わないことは戻さない、と分けて書くのが整理しやすい方法です。

料金表を規約の外に置いて、いつでも変更できるようにしてよいですか。

規約を定型約款として扱う場合、変更は民法548条の4に従います。合理性があり、効力発生時期を定め、変更する旨と変更後の内容と効力発生時期を適切な方法で周知する必要があります。合理性を理由とする変更は、効力発生時期が来るまでに周知しなければ効力を生じません(同条3項)。通知なしで変えられる、という書き方は避けます。

無料トライアルから自動で有料に移る設計は、法律上問題がありますか。

自動で移ること自体が禁じられているわけではありません。ただ、個人が申し込めるサービスでは、申込みの画面に対価や支払時期などを表示し、誤認させる表示をしてはならないとされています(特商法12条の6)。トライアル終了後の課金、金額、解約の期限と方法を、最終画面で分かるように表示しておきます。条文と所管官庁の資料で確認が必要です。

事業者向けのサービスなら、特商法の表示は不要ですか。

営業のために、または営業として契約する者を相手とする役務の提供には、通信販売の規定は適用されません(特商法26条1項1号)。ただし、事業者専用と書いても、個人が消費者として申し込める画面や運用であれば、実態に応じて判断されます。申込み時に事業として契約することを確認する仕組みがあるかが、確認の手がかりになります。

解約しても当月分は返金しない、という条項は有効ですか。

事業者間では広く行われています。個人が相手の場合は、解約に伴う支払済みの料金の取扱いが、消費者契約法9条1号(解除に伴う損害賠償の予定や違約金)か、同法10条(消費者の利益を一方的に害する条項)の問題になります。提供者の都合による終了でも返金しない書き方は、同法10条の問題になり得ます。提供者の都合による終了では日割りで返金する、と分けて書くと安全です。

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