生成AIを使ったサービスの契約は、入力したデータがどこへ行くか、出てきた生成物を誰がどう使えるか、外部のAIが止まったら誰が責任を負うか、で中身が決まります。利用規約のひな形を当てはめるだけでは、録音や文字起こしを扱うサービス、悩みや健康の相談に応じる対話型のサービス、クレジットや従量で課金するサービス、外部のAIモデルに依存するサービスで、現実の場面に条文が追いつきません。このガイドは、AIを提供する側から利用者へ向けた規約と提供契約、そしてAIの導入研修・導入支援・開発を受ける側と頼む側の契約の、書き方を整理した解説集です。個人向けと法人向けの条項の差、会話の相手の同意とデータの保存期間、医療ではないことの書き方、AI特有の課金単位、外部基盤の規約の引継ぎ、AI推進法とガイドラインの位置づけ、納品物の権利、開発でのデータの約束まで、場面ごとに条文の根拠と条項の例を示します。SaaSやアプリの一般的な規約は、姉妹サイトで扱っています。

AIサービスの規約・契約を整えたい方

クラウドとサーバーを表した立体のイラスト

利用規約・提供契約・開発契約・導入支援契約の地図から

生成AIのサービスを出すとき、必要な書類は一つとは限りません。個人向けの利用規約、法人向けの規約と申込書、サービス提供契約、開発委託の契約、導入研修・支援の基本契約と個別契約が、事業の形ごとに組み合わさります。

どの書類に何を置くか、書類どうしが食い違ったらどれが優先するかを最初に決めます。入力データ、生成物、外部のAIという三つの要素を、どの書類で約束するかも、ここで整理します。

個人にも法人にも売る方

管理画面のグラフが映るノートパソコン

同じAI機能でも、個人向けと法人向けで条項は変わる

「法人専用」と書いても、消費者かどうかは申込者の実態で決まります。責任の上限、返金なし、日割りなし、自動更新といった条項は、個人が申し込む場面でどう評価されるかを見ておく必要があります。

無料プランやトライアルの責任、AIの誤出力に関する免責の強さも、個人向けと法人向けで差が出ます。条項ごとの差分を表にして整理します。

録音・会話・入力データを扱う方

クラウドとデータを表した明るいイラスト

取得から派生、保存、削除まで、データの流れで書く

議事録や通話の記録を扱うサービスでは、録音の主体は誰か、会話の相手の同意は誰が取るか、文字起こしや要約などの派生データは誰のものか、いつまで保存して、いつ消すのかが論点になります。

誤認識や誤要約の免責、重要な会話での確認の求め方、通話AIの従量課金と通話履歴の扱いも、データの流れに沿って条項に落とします。

対話型AIで相談に応じる方

サーバーラックが並ぶデータセンターの通路

医療ではないこと、緊急時、誤回答を機能の説明と一緒に書く

悩みや健康に関わる相談に答えるAIは、医療ではないこと、緊急時に提供者が入力を監視して通報する体制がないこと、誤った回答や不適切な表現があり得ることを、機能の説明とあわせて利用者に伝える必要があります。

未成年の利用、会話履歴の扱い、AIであることの表示とキャラクターの応答による誤認も、規約で整理しておく論点です。

外部のAIに頼ってサービスを組む方

利用状況のグラフが表示されたモニター

外部の停止・仕様変更・出力の変動を、利用者にどう約束するか

外部のAIモデルやAPIを組み込んだサービスは、基盤の事業者の規約を下流の利用者へどう引き継ぐか、外部の停止や仕様変更で止まったときの通知と返金、モデルを切り替えて出力が変わることの明示を決めておく必要があります。

自社で作ったプロンプトや設定の保護、利用者が自分のAPIキーを持ち込む場合の責任と費用も論点です。提供形態の事実と規約の記載が合っていることが前提になります。

AIの導入支援・開発を頼む方、受ける方

指標の数値が並ぶダッシュボード画面

基本契約と個別契約、納品物の権利、データの約束

AIの導入研修・導入支援・保守サポートをまとめて提供するときは、基本契約と個別契約の優先関係、研修の人数と時間、サポートの時間帯、オプションの自動更新を定めます。納品されるプロンプトや設定の権利も論点です。

AIの開発を頼むときは、提供するデータの権限の保証、準備作業の成果、再利用するモデル、納入の形態と納入後の運用を決めておきます。

このガイドの解説ページ

よくあるご質問

生成AIのサービスは、利用規約だけで足りますか?

事業の形によって変わります。個人向けなら利用規約とプライバシーポリシー、法人向けなら規約に加えて申込書やサービス提供契約を組み合わせることが多くあります。AIの導入研修や開発を請け負うなら、別に基本契約や開発契約が必要です。書類が複数になるときは、食い違ったらどれが優先するかを規約か個別契約に書いておきます。

「法人専用」と書けば、消費者契約法は関係ありませんか?

書くだけでは足りません。消費者かどうかは、申込者が事業として、または事業のために契約するかという実態で判断されます(消費者契約法2条1項)。個人事業主や副業の個人が申し込む可能性があるなら、責任の上限、返金なし、自動更新などの条項が、個人に対しても成り立つ書き方かを確かめておきます。

AIの回答が間違っていたときの責任は、規約でどこまで免除できますか?

「正確性を保証しない」「最終判断は利用者」と書くのは一般的ですが、損害賠償責任の全部を免除する条項は、消費者との契約では消費者契約法8条により無効となる場合があります。責任の上限を置くときは、故意や重大な過失の扱いと、有料か無料かの区別も決めておきます。

外部のAIサービスを使っていることは、利用者に伝えるべきですか?

提供形態の事実と規約の記載が合っていることが基本です。外部のAIに入力データが送られるのに、外部との通信はないと読める記載があると、利用者に誤解を与えます。個人データを外国にある事業者に渡す場合は、個人情報保護法の外国にある第三者への提供の規定(28条)も確認します。

AI推進法ができたことで、契約書や規約に必ず書くべきことは決まりましたか?

AI推進法は、国の施策の基本理念や事業者の責務などを定める法律で、利用規約や契約書に書く条項を直接定めるものではありません。ガイドラインを契約の前提として取り込むときは、遵守を約束するのか参考とするのかで、債務の重さが変わります。条文と公表資料の原文で確認が必要です。

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監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日